japanese tip と私(⑧旅人に直撃5)

(インタビューつづき)

 

  • 続けていくことで見えるものがある

 

ぱ「座右の銘とかってあるんですか?」

 

た「笑 ないです」

 

ぱ「うそ、めっちゃありそう、哲学とか」

 

た「あれなんすよ、はまれないんすよ、いろんなものに」

 

ぱ「なんか冷静ですよね、どこかで。いい意味でフラットというか」

 

た「そう、なんか、はまりたいのに、はまれなかったりして、どっかでシュッて客観視しちゃう部分があるんですよね。それは自分としてはあまり好きじゃない性質なんですけど。めっちゃ好きなアーティストがいるわけでもないし」

 

ぱ「でもすごい根性を感じるというか、この活動4年目?でしたよね?」

 

た「そうっすね」

 

ぱ「なかなかできないですよ、私なんかヘタレだからほんとにそう思います」

 

た「新しいことをやるのも大事やとか言われることもあるんですけど、なんか、続けて見えるものもあるなっていうね」

 

ぱ「26にして(涙を拭くまね)」

 

た「いやいや笑」

 

 

  • ずっと反骨精神で生きてきた

 

ぱ「そのモチベーションを保つ秘訣はなんだろなっていうね」

 

た「小さい頃は、ずっと反骨精神で生きてきて、自分、学生時代とかも“なんもできへんやつ”やったんですよ。大学初期は時にひどくて。(京都造形大学の)空間デザイン学科に入ったんですね」

 

ぱ「空間デザイン」

 

た「それは、なんでもするんですよ。パソコンで椅子のパーツつくったり、空間のウインドウディスプレイつくったり、地下空間を設計したりとか。本つくったり写真撮ったり、もういろんなことする学科だったんですけど、そこにポンって入ってもーたんですよ。なんか“ものつくりたいな”ってだけでね。親とかも猛反対やったんですけど、実際入ってみたら、思ってたのとちゃうんかったんですよ。想像をつくるばっかりで、パソコンでモデリングとか。いや、実際、ないから、わからんと。そういうプレゼンしたところで、つくってくれたらいいよと。偉そうですけど(笑)。作れへんやんか、と思って、めっちゃ嫌になって」

 

ぱ(爆笑)

 

た「で、どうしようかなーもう学科変えるか辞めようかぐらい思ってたときあって。そのときに自分が提出してた作品についてた名前が、毎回みんな辰巳クオリティーって言ってて」

 

ぱ「へー」

 

た「悪い意味でね」

 

ぱ「あ、そうなんですか?」

 

た「おまえそれ辰巳クオリティーやんけってなったらもう最悪で、下から1番目とか2番目。ようわからんやつ、みたいな。ばかにされとったんですよね、どこか。で、自分はヘラヘラしとったんですけど、それはそれでまあいっかと思って。」

 

ぱ「へー」

 

た「ずっと特になにもできひん半生を送ってたんですけど、妄想だけはしてたというか、口で発するの苦手やったから、こう頭で考えて、でもそれってものにならないとみんなに伝わらないし、」

 

ぱ「難しいとこですよね」

 

 

  • シロクマ先生との出会い

 

た「そんななかで、シロクマ先生の授業を間違ってとったんですよ」

 

ぱ「間違って?」

 

た「1こ数字を間違って出したんですよ、4か3か」

 

ぱ「履修届の?」

 

た「そう。それがジュエリーの授業で。ワン・デイ・ジュエリーっていう授業やったんですよ」

 

ぱ「ワン・デイ・ジュエリー。いい名前」

 

た「一日でジュエリーをつくるっていう。ある女の子は、きのう徹夜して彼氏のこと考えてニキビつくってきました、それが私の青春です、みたいなジュエリーとか」

 

ぱ「あらー、すてき」

 

た「なんか、なんでもアリやったんですよ、その授業は。評価も、それぞれの思ってるものがあって、それをジュエリーとして捉えてくれるんやなーっていうか、“あ、なるほどな”“こんな世界もあるんや”って思って、授業を辞めずに行くようになったのがあって。毎回作文を書かされるんですね。なんでも、あったこととか、先生への手紙を書くんですけど。ダンスでこういうことがありました、僕はこうやったけど、こうしました、みたいな。そして先生から返事もらうんですけど、先生もすごいおもしろがってくれたりとかして。ああ、なんか、自分の妄想を文字にするだけで、理解してくれる人がいたんや、と思って。」

 

ぱ「すてきな話―。だって絵本に、“ぼくはたつみくんのことが大好きで”って書いてあったよ」

 

た「笑 そうそれで一緒に釣り行ってくださったりするんですけど、家泊めさせてもらったりとか」

 

ぱ「先生はたつみくんのどこが好きなんだろう?きいたことあります?」

 

た「いやーわからんです。あんまききたくないっすね、こそばいですね」

 

ぱ「やー、教え子といえども、プロのデザイナーがここまでする?!ってね。まあケンキョラスも一緒なんですけど」

 

  • かたちのないものをつくる

 

た「うーん。で、ある日に、ゴールデンウィークに“遠いところへ行け”って指令が出たんですよ、先生から。で、作文に書いて提出しろって課題で。お金ずっとなかったんですよね、その時。で、まかない目当てに働いててこれ(ジャパニーズチップ)生まれたのもあるんですけど、お金ないから遠いところに行けない、と。で、考えてたら、うーん、じゃあ胃袋から遠い旅をしてみようと思って」

 

ぱ「胃袋?!」

 

た「お金を使わずに京都でどれだけ生きていけるのかってテーマで2週間くらい実験したんです。いろんな設定をつくって、友達がいない設定とか、パンの耳だけで生きてみるとか、水は川の水に限るとか、近所の知らない人にごはんをねだるのはオッケーとか。まあけっこう辛かったんですけど、その日記を書いたりして。」

 

ぱ「自作自演だ?」

 

た「そうですね。それも作品としてみてくださって。で、自分はなにもつくれないけど、こうやって体験して、おもしろがってくれる人はいると。ていうのから、形にならない作品をつくっていくことが多くて。状況を作品にするというか。」

 

ぱ「根幹はそこだ?このジャパニーズチップも。箸袋はあるけど、そのまわりで発生する体験だったり状況だったり。アートだ?」

 

た「生き方の」

 

ぱ「way of style?」

 

た「なんていうかな、アートになったらいいなと思いますけどね」

 

ぱ「壮大な実験の途中なんですね」

 

た「そうですね」

 

ぱ「シロクマ先生との出会いもおおきいですね」

 

た「辞めてたかもしれませんからね。そこから、なんか、出版社のアルバイト誘ってくださったり、いろんな相談に乗ってくださったりして。今回のクラウドファンディングとかも一番高いやつ応援してくださったりして。」

 

ぱ「シロクマ先生、かっけー!」

 

た「ね。まだお若い方なんですけど、30代後半くらいかなあ」

 

ぱ「そうやっちゃ、私あんまり変わらんじゃん、やだー。この絵本のシロクマ先生の絵も文章もとても素敵ですもんね、詩的で。もちろんお二人ともだけど。やっぱこう、シロクマ先生のがあるのとないのとではちがいますよね、私は辰巳さんご本人より先に絵本に出会ったのもあると思うけど、ちゃんと大人が応援してるっていうのが最初にわかったから。しかもこんな不思議な魅力の持ち主、すてきな大人がって」

 

  • 今後のはなし、ジャパニーズチップの行方

 

ぱ「そのシロクマ先生が、展示会のデザインを担当なさる?」

 

た「やってくれると思います、オッケーしてくれたから」

 

ぱ「展示会はどこでやるんですか?島根?」

 

た「いま決まってるのは、東京です。」

 

ぱ「おおー。時期的には?」

 

た「今年中にと思ってます。東京の展示が、海外へのチケットになればいいなっておもってるんですけど。東京と海外は1回ずつはやりたくて。それが済んだら(ジャパニーズチップの)図鑑ができてるはずなんで、あとはみんなが好きにつくったり楽しんでくれたらいいなって」

 

ぱ「じゃあまたクラウドファンディング?」

 

た「クラウドファンディングせんでもできたらいいです、次は」

 

ぱ「はい」

 

た「いろんな人が勝手に応援してくれて、協賛とかついてくださったら」

 

ぱ「ですね。呼ばれて、行きますって展示とかするっていうのが形としてはいちばん美しいかもですね」

 

た「それが理想ですね」

 

 

  • ひとことで説明できない参加型アートとしてのJapanese Tip

 

ぱ「アートプロジェクト・・・」

 

た「ね、呼名がなかなか難しいですよね」

 

ぱ「でも、それもまた良いですよね。なんていうかこう、かっちり決まりきってないというか、受信者側に能動的に解釈させる余白があるというか。」

 

た「だからこう、人に紹介してもらうときが一番申し訳ないって思うのが、簡単に説明できないところで。」

 

ぱ「それはあるかもですね。私も誤解してたというか、最初インスタで見た印象と、Facebookの印象が全然ちがって、公式サイト見たらまた別の印象で。」

 

た「笑 それたぶんこっちが下手なんですよ」

 

ぱ「いやいやいやいや、多面的というか、マクルーハンいうところのクールなコンテクストですよ。下手にブランディングだけうまくてパッと見スタイリッシュだけど内容がないよーみたいなのより全然クール。参加型アートですよこれは」

 

た「笑」

 

ぱ「長々とすみません。貴重なお時間と楽しいお話し、ありがとうございました。ちょっと、私の力でまとめられるか不安ですけど、でもすごいおもしろかったです」

 

た「こちらこそありがとうございます。詐欺の話メインで。笑」

 

ぱ「あ、最後に、宮崎に人々に言いたいこととかありますか?」

 

た「宮崎の人に言いたいことか・・・あ、マンゴー食べれなかったです 笑」

 

ぱ「なんで最後小4男子みたいになっちゃうんですか、ずっと大人っぽかったのに!笑。じゃあ送りますね、マンゴー。旅が終わったころに」

 

(以上、書き起こしおわり)