〈うしたに〉という世界

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すべては皿の中に

 

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完全にトラットリアだと思った。

都農ワインと美味い料理を出すお店。

私が探し求めていたワインと料理のお店は、居酒屋の形をしていた。

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この〈うしたに〉という世界。

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単純に、一皿ひと皿、「料理が好きなんだな〜」と伝わる。歓びが伝わる。宮崎におけるトラットリアの最適解が、みつかった。折衷案という意味でもそう。

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こんなに感動しているのは、「宮崎のワインを、それに合う料理でもって提案してくれる店があってもいいのではないでしょうか?地に足ついたレベルで」と常日頃から思っていて。私が知らないだけなのかもだけど、特にワインに関しては難民だったから。地産地消の観点でいくならなおさら。

 

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マリアージュとかペアリングとか、そんなんじゃなくて、品揃えは、都農ワインボトルか、グラスならチリ産を数種という潔さ。

渋谷のラジオ「11AM」で、アヒルストア、リベルタン、祥瑞など東京の飲食兄さんらが推奨していた「グラスでちょこちょこいくより、今日はお前と向き合うぜってじっくりフルボディで」というワインの飲み方を試すときが来ました。

 

キャンベルアーリーのドライをひとり一本開けました。都農ワインが万能なのか、うしたにの料理が美味いのか。きっと両方。何と合わせても、びっくりするくらい美味かった。

 

「俺ほどワインの似合わん男はいませんから〜」とビール補給しつつ、当のほろ酔い店主は、時折歌を口ずさみながら料理を作る。ノってる料理人を眺めるのは楽しい。ご陽気とシャイをあわせもつ店主の姿勢がいちばんイタリアらしいといえば、そうかもしれない(イタリア行ったことありません)。ただ、食事の進み具合を確認するためか我々の机上に視線を送った店主の目の鋭さを、私は見逃さなかった。

 


とにかく巧みで愛ある編集者に惹かれる。人はみな、生きてるだけで編集している。料理人でもマッサージ師でも書家でも花屋でも、医師でも学者でも、その人がそれまで経験してきたジャンルや型式や流派を横断し、自身の血肉に消化したものを提供する。英語圏では、お店を褒める表現のひとつに"good edit"というのがあるらしい。 〈メッシタ〉や〈メゼババ〉という店や鈴木美樹という料理人の名前を教えてくれたのは、鹿児島〈花柳食堂〉の店主で、イタリア料理とは本来そんなにかしこまった高級路線に限ったものではなく、もっと大衆に開かれたものがあってもいいという提案だと、私は勝手に解釈していた。宮崎の〈メッシタ〉や〈アヒルストア〉が、こんなところにあったとは。ここの店主こそ相当な編集者で、個人商店という表現体は芸術だ。

 


店主の経歴や都農ワインの話は、上野敏彦著『闘う葡萄酒  都農ワイナリー伝説』(平凡社)に詳しく。

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https://www.amazon.co.jp/dp/4582836046/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_75d1Db27X9NB8

 

 

ホテルレストランで修行した料理人が、その腕をローカライズして商いにしていく闘い。あれ?どこかできいたことある。そう、〈鉄砲〉のマスターに繋がるなあなんて、個人的には思ったり。

 


特に感動だったのは、パスタ。

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「納豆と大葉の和風」を食べたが、「明太子のクリーム」含め、全種類食べてみたい。次は、自家製梅酒も絶対に飲む。「ソース焼きそば」も普通に美味そうー。

 


我々の他に、先客でファミリーが1組。未就学児〜小学校低学年くらいの娘さんが、テレビを観ながらノートを広げて宿題かお絵描きか何かしていた。こんな町中華よろしくな眺め。常連さんなのか、店主がお菓子をあげていた。かわいい。 「もう、うちは一日一組でいいってすわ。だからもうファミーユって名前に変えようかと思って。へへへ」と笑う店主。死んでもうてるやないですか。「じゃ、ファミーズかな〜」複数形ですね、わかります。

 


すごいグルーヴだ。

〈うしたに〉という世界。